Netlore
ネットロアが好きだ。
別にネットに限定しなくても良くて、民話や都市伝説もかなり好きだ。
特に、意図が全く感じられないものが好きだ。
何でそれがそうなったのか?が、分かるのもの好きだし、わからないものも好きだけど、そこに意図が介在していないように見えるものの方が良い。
伝言ゲームで内容が変わっていくのは面白いけど、明確な方向性があると価値がなくなってしまう気がする。
ずっと抽象的な話をしてきたので、具体的な例を出す。
時事ネタを絡めるならば、台風コロッケはわかりやすい。
恐らく、元ネタを知らずにコロッケを買っていく人がとても多いだろうし、この先確実によく分からない理由が後付けされていくだろうと思う。
元ネタが完全に失われた後に残る考察や習慣が好きだ。
多分台風コロッケに関しては元ネタがはっきりしすぎているので、ちゃんと僕が好きな都市伝説の状態にはならないか、ものすごく時間がかかると思うけど、リアルタイムにそれを目撃出来ている、というのは得点が高い。
ネットで有名な「行かなきゃ」という都市伝説があるのだけど、僕はこれが好きだ。
知らない人も居るかもしれないので、概要を説明すると
「1996年9月23日の深夜に、突然「ドラえもん」ののび太がひたすら歩いて、最後に振り返って「行かなきゃ」というだけのアニメーションが放送された」
というもの。
この中途半端さと意味不明さが、そのまま広まったというところがとても良い。
「後付けが沢山ついたのは広まってから」というところが重要で、例えばこれがもっとわかりやすい意図を持った形(怖がらせてやろう、感動させてやろう、等)で広まったのであればそれほど面白くない。
既にここ10年でかなり形が変わったり後付けのストーリーが加わったりしているけど、それらの後付はどれもその辺りの「意図を持ったもの」で、わかりやすく後付けという感じで興ざめだなぁと思う。
ところで、昔「都市伝説101夜」というサイトがあった。
今もあるのかも知れないが、ちょっと探しても出てこないのでなくなってしまったものとして話す。
そこの管理人がよく用いていた概念に「対抗神話」というのがある。
「Aという情報の一部を打ち消す形を取るBという情報は、その一部が虚偽である検証がされていれば、B自体が無根拠であってもAよりも信用される」というようなものだったと思う。
この概念のを説明しているページを読んだのは確か中学生の時だったと思うけど、「世界の真理じゃん」と思った記憶がある。
あまりにも印象深かったので今でも度々その単語を使うが、あまりにも誰にも通じないため、ひょっとしたら「都市伝説101夜」自体が都市伝説であった可能性を少し考えてしまう。
(そのへんに詳しい人がいたら是非、あのサイトがどうなってしまったのか教えてほしい。)
今ネット上、特にTwitterではこの形を取ったデマが非常に多い。
デマとまでいかなくても、Aの中の一部を否定するだけでBという情報は検証フェーズをすっとばしてまるまる信用してもらえるのだから、その応用例は多岐にわたる。
例えば、もう一つ時事ネタから例を出すならば、これかなと思う。
僕は絶対貼らないです。
— Sakai 🌐📲 Web系おかま (@sakai_web) October 10, 2019
論文が出ており、
5ミリのガラスが耐えられる圧力は5400パスカルに対し、
米文字みたいにテープ貼った場合、耐えられる圧力は3800パスカルまで下がります。
アメリカ海洋大気庁もハリケーンが来た際絶対窓にテープ貼らないよう公告をしています。
誰信じるかは自己責任で! https://t.co/HrgMt8JaUU
今はもうかなり検証されてしまっているので「検証フェーズを飛ばす」とか「無根拠に信じられる」というのには直接は当てはまらないかもしれないけど、そういった検証情報が出てくるまでにかなり拡散されてしまっているし、これを読んだ多くの人は最初、信じてしまったのではないかと思う。
これは、「台風のときは養生テープを窓ガラスに貼ると安全」という内容の、「安全」に含まれていそうな「養生テープを貼ると窓ガラスが補強される」を打ち消していて、養生テープをはらないほうが安全、という別の情報で上書きしようとしている。
が、実際には窓ガラスに養生テープを貼るのは、窓ガラスを補強するためではなく、割れたガラスの飛散防止のためなので、Bが否定できているのは実際にはAの一部だけ、という事になる。(もともとはAの主張には含まれていないかもしれない。)
しかし、このBはAの一部を否定することで、謎の説得力を手に入れてしまっている。
もちろん、これはデマとは少し違うので、例としてはそんなに相応しくないかもしれないし、もっとわかりやすい例は多分山のようにあると思う。
対抗神話の概念自体は面白いけど、どうしても「後付け」側になってしまうので、この構造で僕の好みの話は多分生まれないだろうな、とも思う。
でも、こういう状態を直接観測出来るという点で、ネットは本当に面白い。
民俗学の学者さんとかはこれを自分の足で歩いてやっていたのだろうから(しかももう失われてしまっているかもしれない事柄に対して)、本当に頭が下がる。
ネットロアが好きだ。
別にネットに限定しなくても良くて、民話や都市伝説もかなり好きだ。
なんかそういう、意図がわからない、とても有名な話とかがあれば教えてほしい。